カナダに住むなら知っておきたい、カナダの人権のあり方とは。カナダ人権博物館で考える。

カナダ人権博物館カナダ旅行記

カナダ人権博物館

カナダ国立人権博物館は、カナダ国内と世界で起きた人権に関わるできごとを紹介し、人々に人権について考えさせる場所。カナダという国がどのような人権問題に関わり、どのような対処をしてきたか、「人権」という点で見た現在のカナダの原点を学べます。

カナダ暮らしで目にする「人権」

カナダは誰もを受け入れる努力をしてきました。例えば建物内には必ずといっていいほどボタン一つで自動で開くドアがついているし、スロープもあるし、広いスペースのトイレもあります。障がいがあることを理由に社会になじめないような人がいる社会にしないようにしているのがカナダです。

私が驚いたことのひとつは、カナダのバスの前方の乗車口が低くなること、そしてスロープも出るようになっていることです。今年実家に帰った時に小さい市内循環バスを利用しましたが、杖をついたお年寄りの利用者が多いにも関わらず、出入り口には数段の大きな段差が。これがカナダだったら問題になるはずなんですが、面白いことに利用者にとっては普通のようで、それを受け入れているようでした。それどころか、スロープがあればいいのになんて考え方自体がなかったように見えました。私もカナダに住まなければそれが当たり前で疑問を持つこともなかったと思います。

カナダに住むなら行っておきたい場所

カナダという国の考え方を学び、必要であるときにそれらしい振る舞いができるようになるためにも、カナダに住んでいる人なら一度は訪れた方がいい場所だと私は思いました。

ただ、読み物が多くて上に行けば行くほど疲れが溜まってくると思います。私も最後は半分放心状態。さらに入館したときは閉館まで2時間半くらいあったのに、時間が足りなくなりました。せっかく行くのなら午前中から余裕を持って入場し、適度に休憩を取りながら進むことをおすすめします。そして最初にあなたが思う「人権」とは何かを、博物館を訪れる前に一度自分に問いかけてみてください。

場所

ウィニペグのダウンタウンから歩いて行ける距離。

建物

あえてこの中途半端な角度から。笑

建物は8階建て。1階から8階へとギャラリーが展開していきます。これは、暗闇から光が見えていくようすを表しています。

施設の設備

Inclusive-この言葉、知っていますか?あらゆる人を受け入れる考え方で、カナダではこれを一つの目標としている会社もあります。様々な年齢、男女、人種の人々が受け入れられているという感じる職場にしましょう、っていうことです。公共の場でいえば先に述べた通りですね。車いすだからとか、段差が登れないからとか、男だから、女だから、〇〇人だから、できませんね、はダメなんです、カナダでは。

この博物館ももちろんそれを取り入れていて、一部を紹介すると、館内すべての場所にスロープまたはエレベーターでアクセスできるようになっているし、ビデオには字幕、音声描写、アメリカ手話とフランス語手話がついています。

このスロープを登っていきます。

ギャラリー

では、ギャラリーの紹介を。一部分だけより詳しく書いてます。

1階

1階は特別展示で、期間により内容が異なります。私が訪れた時は南アフリカのネルソン・マンデラさんの自由への戦いについてでした(2019年1月まで)。恥ずかしながら、アパルトヘイトについては学校で習いましたが、その現状については詳しく覚えていません(知りません)でした。黒人差別は知っていましたが、子供の頃の私にとっては遠い外国で起こったことで非現実的すぎてうまく想像できなかったんだと思います。いや、大人になってもカナダに住むまで人種差別がどんなに深刻なことだったのか知らなかったと言えるでしょう。映画で見たことはありましたが、こちらもどこか現実味がなくちゃんとわかっていなかったんです。カナダに来てアメリカのニュースを見て、こんなにひどいんだというのを初めて理解できたと思います。多分これ、日本にずっと住んでいたら本当の意味で理解するのは簡単ではないと思います。

このギャラリーで一番衝撃を受けたのは、看板でした。「黒人・有色人種専用の待合室」「白人専用のスイミングプール」「黒人男性用トイレ」「白人女性用トイレ」…。住んでいる範囲が突然白人の物となれば、そこに住む黒人は強制退去。そんな人種差別でしかないとしか言いようのないアパルトヘイト制度の撤廃に尽くしたネルソン・マンデラさんについて、撤廃の動きと逮捕、釈放までと国・世界の動きを説明してあります。

まだ1階なのにこのギャラリーだけでも結構心にズンと来たし読みごたえがありました。

2階

What are Human rights?(人権とは?)
このギャラリーではHuman Rightsについて人々の考え方をマルチメディアショーで展開。歴史上の100の時点での年齢別、地域別の人権についての考え方が見られます。

Indigenous Perspective(先住民の考え方)
Metis(先住民とヨーロッパ人の混血児または子孫)そしてイヌイット民族は全ての人そしてすべての物が相互に関係を持つという世界観を基準とした権利や責任の概念を持っています。360度映像を使っての、先住民の権利や責任について、4世代のそれぞれの人によって語られます。

奥の木の円の中

ちょうどフランス語バージョンが流れていたので最後に観ようとしましたが時間がありませんでした。これは楽しみにしていたのに、残念。

Canadian Journeys(カナダ国の旅)
博物館内で一番大きなギャラリー。先住民の言語の権利や難民の受け入れ、同性結婚、日本でも注目を集める外国人労働者の権利などなど、カナダが進んできた道(よき道もそうでない道も)が展示してある場所。そして戦争時の日系カナダ人についても展示があります。

第二次世界大戦でカナダと日本が敵国であった時期、日本人が陰謀を企むのを恐れたカナダは、カナダ西側にいた多くの日本人を疎外地に収容しました。家や持ち物は戦後に返されるとの約束でしたが、実際は売られてしまいました。

1988年に正式な謝罪がなされ、その謝罪の文書も見ることができます。

真ん中の円の部分に面白い仕掛けがあるので数人で乗ってみるといいでしょう。

新10ドル紙幣に描かれているのは人権博物館と…このViola Desmondさんという女性、知っていますか?

彼女は黒人のノバスコシアのヘアサロンオーナーで、1946年に映画館でそこが人種隔離された場所と知らずメインフロアの席を選びました。黒人専用のバルコニーに移動するように言われるのを断ると、彼女は映画館から引きずりだされ逮捕されました。

カナダでも、Segregation(人種的分離)があったんですね。。知りませんでした。

3階

Protecting Rights in Canada(権利を守ることinカナダ)

この場所ではカナダで実際に起きた人権に関する事件が紹介されます。それに対して3問ほどの質問があり、自分がどう思うか、手元のスクリーンでYes/Noで答えられます。その後全員の集計結果が画面に表示されます。最後に実際にどういう判決が下されたかも知ることができます。

これは面白かったです。全問やりたかったくらいでした。私たちが参加したのは男女平等に関して女性森林消防士の話と、言語の自由について先生が生徒に対してどこまで自分の意見を述べていいかという話。これは終わったあとライム君と議論しました。

女性森林消防士の話は、複数の体力テストの中の一つに合格できなかったことを理由に解雇された女性の話でした。その中で、女性の場合は男性とは違う体力評価基準にすべきかどうかという質問がありました。

男女平等といっても人の命に関わる仕事。私の意見としては、Noで、同じ基準をクリアすべきだと思いました。例えば同じ状況下でAさんが二人救出できるのにBさんは一人しか救出できないなら、Aさんを採用すべきだと思います。それは男だから女だからではなく、男性でも力が強くない人はいるし、女性でも力が強い人はいます。でもそうしたら必然的に男性の割合の方が多くなるわけで、そしたら今度は採用数が平等じゃないってなるわけですね、きっと。

判決では、これは性差別となる、で、辞めさせられた人はまた雇われることになったようです。詳しくは下記より。
https://www.cbc.ca/news/canada/supreme-court-orders-female-firefighter-rehired-1.173366

これ、森林火災の消防士じゃなくて住宅火災の消防士でも同じ結果になったのでしょうか。自分が助けられる立場だったら、男性でも女性でもどちらでもいいんですけど、より体力のある人が来てほしいと私は思いますけどね。

皆さんはどう思いますか?

4階

The fragility of human rights(人権のもろさ)

ナチス政府が法と暴力で人々の市民そして人間としての権利を奪い大勢が加勢したとき、Genocide(大虐殺)が結果として起こりました。ここではThe Holocaust(ユダヤ人の大量虐殺)を見て虐殺を認識し、それを防ぐことを学びます。

カナダ人がユダヤ人に対してどう接してきたか、カナダでの反ユダヤ主義についてビデオを通して学ぶこともできます。

Turning Points for Humanity(人類のターニングポイント)
誰であろうとどこに住もうと人間の私たちには権利がある、という考えが1948年の世界人権宣言で適用され、人々はそれを実現するために行動してきました。ここでは画面を触らずに腕の動きがマウスポインタになるデジタルモニターで人々の人権を守るために起こしてきた行動や考え方を見ることができます。

Breaking the Silence(静けさを壊すこと)
「あのとき」誰も何も言わなかったら、今の私たちは存在していないかもしれません。大虐殺が起きて人々が言葉を発したとき、全ての人の人権がさらに濃くなりました。ここではカナダ人がどう行動を起こしたかについて、

The Holodomor(ウクライナ人が住んでいた地域で起きた人工的飢饉/1932‐33)
The Armenian Genocide(アルメニア人虐殺/19世紀末‐20世紀初め)
The Holocaust(ユダヤ人大量虐殺/第二次世界大戦中)
The Rwandan Genocide(ルワンダ虐殺/1994年)
The Srebrenica Genocide in Bosnia(スレブレニツァの虐殺/1995年)

の事件を通して見ていきます。

真ん中のスクリーンでは世界中で起きた深刻な人権侵害について書かれています。隠されてきた事実、否定された事実、明らかにされた事実。さて日本で隠されてきたこととは?現在の私たちができることは、まずその出来事の存在を知ること、そして事実を理解すること。双方の見方を学び、自分の意見を持つこと。その歴史を繰り返さないようにすること、だと思います。

Actions Count(行動例)

学校、コミュニティ、世界中でカナディアンが人権に対してどんな行動を起こしてきたか、またその行動が違いを生むことについてポスター感覚のスクリーンで展示されています。

5階

Rights Today(今日の権利)
ここも興味深い展示でした。現代の身近な「モノ」も人権に関わっている、ということで、タッチスクリーンでその理由が見られます。ゴミ袋とか、油とか、靴とか、スマホとか。意外な形で人権に関わっていることに驚きです。

6階

Expressions
こちらも期間によって変わるみたいですが、私が見たのは「カナダ150年の権利の道」で、カナダの人権の歴史が展示してあります。

7階

Inspiring Change
自分の意見を紙に書いてシェアできる場。他の人の意見も見ることができます。

8階

Israel Asper Tower of Hope(希望の塔)

階段かエレベーターで行けます。結構怖い。
最後に8階に上りましたが、心臓の弱い方や高所恐怖症の方は避けた方がいいかもしれません。私は階段を利用しましたが結構スリリング。エレベーターも確かガラス張りだったので怖いかも。

外の眺め

平気な方は8階で外の眺めを楽しみましょう。

私が感じたこと

こうやって歴史を振り返ってみると、いつの時代にも権力を持ちたいと思う人たちがいて、それが差別や争いに繋がり、周りの何の関係もない人まで巻き込んでいくというのはとても悲しいものだと感じます。人間って醜いなあとまで思えてしまいます。でも、そういうものなんですよね。

そんな中で私が感じたのは、結局は全ての人が「人権とは何か」というのをきちんと理解しないと「人権」というものは本当の意味で満たされることはないんじゃないかということです。

特に難民としてカナダに来た人たちにカナダという国で自分の信条を傷つけられた私には思うところがたくさんあり、途中で怒りがわいてくるほどでした。これらの展示を読むのは誰?と。

例えばカナダのすべての学校がこの博物館を訪れることを教育方針に入れたとしたとしても、移民や難民として新たにやってきた人がカナダという国がどういう歴史に向き合い、今どんな考え方を持っているかということを理解していなければ、そこで必ず衝突があると思います。そこでカナダ人が「カナダは異文化を受け入れ人権を尊重する国だから私が相手を受け入れなきゃいけない。」というのは違うと思います。

この前エドモントンからカルガリーに行くバスの中でカナダに来たばかりの人か明らかに移民か難民かという人がいて、バス内でイヤホンなしでビデオを見ていました。近くの女性がイヤホンをつけてと二度お願いしたのに、彼は「イヤホン持ってないんだ」と笑顔で答えていました。さて、カナダ人は異文化を受け入れるべきでしょうか。カナダに来た人が他人を尊重することを学ぶべきでしょうか。

全ての人が他人を尊敬すること、人を受け入れることを深く理解し実践できなければ、真の意味での人権の確立はできないと思います。

簡単そうで簡単ではない、人権問題。

まずはカナダに住む一人の人間として、カナダという国の考え方を心に留めて、いざという時にカナダ(人)らしい行動を取れるようになりたいです。最低でも「知らなかった」とかいう理由でカナダで誰かの人権を侵害しないように。

また自分が何か言われたときに、これらを知っておくことで、自分を守るためにできることに差ができると思います。人権に関したカナダの法律を少し知っておくことも大事でしょう。

最後に書いてきました。右のが私の。文法&スペルミス…(-_-;)

最後に

というわけで、もしカナダに住んでいるなら一度は訪れたい場所、カナダ人権博物館の紹介&コメントでした。ウィニペグに行く機会があったら(これを機に行くのもありかも?)、ぜひ訪れてみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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