きっと多くの方がご存知の通り、カナダの公的医療は州の保険に入っていれば基本的に無料です。
しかしながら特に近年、有料のプライベートヘルスケアクリニックを利用する方が増えてきたようです。
かく言う私も、2024年初頭に体調が悪くなり、その時診てもらっていたドクターに不満を持ったことで、夫から背中を強く押されるようにしてプライベートヘルスケアクリニックに申し込みました。
今回の記事では、主に
- プライベートヘルスケアクリニックについて
- 利用しての感想と正直な本音
を語りたいと思います。
カナダのプライベートヘルスケアクリニックに興味がある方や詳しく知りたい方は何か発見があるかと思いますのでぜひ読み進めてみてくださいね。
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プライベートヘルスケアクリニックなど存在しない州や準州もあるかもしれません。ここではアルバータ州の話をしていきます。
プライベートヘルスケアクリニックとは
いろんな場面でパブリックに対してプライベートという言葉を使うことが多いですが、
医療面でプライベートという言葉がつくもの、特に「プライベートクリニック」という言葉は少し混乱をきたす言葉でもあります。
なぜなら、一般的にPublicかPrivateの比較をする場合、州の保険でカバーされるものをPublic services、民間の保険でカバーされるものや自己負担となるものをPrivate servicesと言い、
- 歯科医や検眼医
- マッサージなどのPreventative health services(病気の予防的な医療サービス)
などもPrivate servicesで、プライベートクリニックと呼ばれることがあるからです。(アルバータ州の場合を参照)
さらに、メディア等では「手術センター」や「イメージングセンター(特にMRI)」を指すのにprivate clinicという言葉を使っていたり、
この記事で書いているプライベートヘルスケアクリニックも、人によってはプライベートクリニックと呼んでいる人もいるため
インターネット上でPrivate clinics in Canadaとか、public vs private clinics in Canadaとかで検索してみるとわかりますが、記事によってprivate clinicが指してるものが違い、混乱します。
さて、今回私が書いているクリニックは主にprivate healthcare clinicやprivate health clinic、記事によってはprivate medical clinicなどとも称して存在しているもので
カナダの州の医者登録から独立したプライベートドクターに診療代を全て自己負担で支払うような完全な民間の医療クリニックではなく、
上に挙げたprivate servicesのいくつかに、カナダの州の医者登録をしたドクターのいるクリニック(形態としては普通のクリニックと変わらない)をくっつけて、病気の予防的な医療サービスを提供するクリニックとして料金を設定しているクリニックです。
カルガリーのプライベートヘルスケアクリニックだと、パッと調べた感じ最低年間5000ドル~(初年度)かかるようですが、この金額の中に、クリニックによって多少違うものの、運動療法、マッサージ、栄養士の受診、メンタルケア、フィットネス、トラベルクリニック、初年度のトータルヘルスチェックなどのサービスが含まれています。
また、ファミリードクターとなるドクター達は州のお医者さんの登録をしているドクター達なので、診療代など州の保険でカバーされるものはカバーされます。
が、普通のクリニックよりもドクター一人あたりの患者さんが少ないので、ドクターが一人の患者さんに費やす時間が増えることや、
ドクターが専門医へ紹介状を送る際も、専門のコーディネーターをつけていることで素早く丁寧な紹介状を準備でき、専門医への紹介をできるだけ早く進めることができる、とするプライベートクリニックもあり
普通のクリニックより手厚いサービスを受けられる(それらのサービスに支払っている)ということになるわけです。
プライベートヘルスケアクリニックを利用することになったきっかけ
ちょうど2023年頃、プライベートクリニックが話題になっていた時期がありました。
その頃リンパにしこりが触れたり、小さめの帯状疱疹ができたりと、私の体にちょこちょこ不調が出ていたんですね。
私が自分のファミリードクター(当時は州のクリニック)についてあまり満足していなかったこともあり、夫がプライベートクリニックの話をちょくちょく出していましたが
有料で安くはないので、「そこまではしなくても、、」と何度か断りました。
それから一年ほど経ったころ、風邪からのリンパの腫れ、しかも首の部分に3つ確認できたので、抗生剤をもらい、血液検査も受けました。
するとANA検査という自己免疫疾患のスクリーニングテストで陽性が出たんですね。
さらにその後顔に発疹も出て、色々と調べると、まさに全身性エリテマトーデスという難病のような症状の一部が出てきていました。
夫も色々調べてくれたところ、追加の血液検査があるようだということになり、フォローアップの診察には「自分も行く」とついてきてくれてドクターにそれを話してみますが
血液検査についてすごく濁され、結局、3-6ヶ月専門医を待つように言われ、もしその間何かあればまた来るように言われただけでした。
病気かもしれないのに待つことしかできない。ということに私自身も不安でいっぱいでしたが、夫は不安を通り越して怒りでいっぱいだったようです。
「日本に行って調べてくる?」という話も出ましたが、もし本当に病気の場合、日本にそのまま滞在するのか、カナダに戻ってきてもすぐ専門医に診てもらえないかもしれない、など色々考え、
プライベートドクターならもしかしたらもうちょっとやってくれるかも、という話になり、夫に手を引かれながら夫婦でクリニックに話を聞きに行きました。
日本への航空券代、ホテル代、病院代などと天秤にかけたわけです。。
このときすでに微熱、低血圧、頭痛、顔の発疹の症状が出ていて気分が悪い状態で、お金持ちな感じの雰囲気に少し居心地の悪さを感じつつ、夫に背中を押されてサインしました。
これが私がプライベートヘルスケアクリニックを利用し始めたきっかけです。
※ちなみに追加の血液検査(リウマトイド因子)、やってくれました。その結果が出る前に入院することになりますが…
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子どもは割安なので、クリニックには息子と2人で登録しました。夫は様子見。
他の患者さん(利用者)の印象
クリニックにお金を出して利用する方ってどういう方なのでしょう…?
待合室で待っているときに見た利用者の方だけでしか言えませんが、ぱっと見の印象としては白人の方が多く、年配の方が多めですが30代くらいの方も見たことがあります。
待合室で一度だけアジア人の家族を見ました。お母さんが妊娠していて、その健診のようでした。
(あまり人種で言いたくないですが、結構重要な情報だと思うため言及。)
患者さん同士や付添人との会話、または身だしなみや雰囲気から、経済的に余裕のあるお金持ちで、健康を意識している方たちが利用しているような印象を受けます。
自分にはちょっと場違いだなと思うことがよくあります。
利用したことがサービスの一例
プライベートヘルスケアクリニックは前述したように、マッサージ、栄養士、メンタルケアなどもともと有料のプライベートクリニックのサービスと州の医療サービスが一緒になっているものですが、その内容はクリニックによって異なります。
私が自分が行くクリニックで利用したことがあるものの一部を挙げると、
運動療法や栄養士の利用、マレーシアへの旅行前にはtravel clinicのナースと電話し、後日同クリニック内でA型肝炎と腸チフスの予防接種を受けたりしました(ワクチンは自費)。
あとは血液検査や心電図検査ができるラボがクリニック内にあるので、検査が必要な場合はそこを利用しています。
他にも受けられるサービスはあるものの、全部は受けきれてないです。
プライベートヘルスケアクリニックを利用して
ここからは、プライベートヘルスケアクリニックを利用して気づいたことを5つ挙げます。
- お願いすれば検査を受けさせてくれる
- 担当ナースからの連絡があった
- エコー検査を受けてくださいという催促がきた
- 予約受付担当者にすぐ連絡が取れないこともある
- すぐには予約が取れないことも
次から詳しく書いていきます。
お願いすれば検査を受けさせてくれる
カナダのファミリードクターは本当に様々だと思います。外国から来た方も多いので、病気に対する考え方が違うこともあるためか、すぐに薬を出したがらないドクターや、追加検査を渋るドクターもいます。
プライベートはやはりそこに差をつけるべく!なのか、「検査を受けて問題ないというのを見ないと納得いかない」というのを伝えれば、できる限りの追加検査を行なってくれる印象です。
私の経験で言うと、以前の州のファミリードクターはやってくれなかったリウマトイド因子の検査を行なってくれたことが一例です。
担当ナースからの連絡
あるとき胸痛があるからドクターの予約をしたいと言うと、担当ナースから症状について聞きたいのですぐ連絡します、という返答がきました。
そうです、担当ナースがいるのです。と言っても電話でしか話したことがありませんが。。
胸痛というと心臓の問題があるかもしれないので、確認の電話だったんですね。
その日は木曜日。緊急性がなかったため月曜にドクターの予約を入れることになりましたが、州のクリニックではこんな風に連絡してくることなんてないんじゃないかと思いますがどうなんでしょう?
エコー検査を受けてくださいという催促
あるとき乳房の痛みでドクターを受診し、エコー検査を受けるように言われましたが、クリニックが使っているイメージングセンターA(requisition(エコーを受けてください、という書類)に載っているところ)ではなく過去に何度か利用したセンターBで予約を取りました。
するとAのセンターから予約の催促の電話が来ました。こんなことは初めてでした。
さらに、Bのセンターでの予約に変更があり先延ばしになってしまい、結局受けるまでに1ヶ月くらいかかってしまったのですが、
その間プライベートヘルスケアクリニックの担当者から予約をしたかの確認の連絡も来ました。
州のクリニックでは、こんな感じで連絡が来ることはこれまでなかったです。
予約受付担当者にすぐに連絡が取れないことも
私が行っているこのクリニックは、患者さんとの距離を大切にし、クリニックの予約時にも症状などを詳しく聞くことでその不調に対して万全の対策を取れるようにされています。
ドクター2-3人の患者さんごとに担当コーディネーターがいて、予約したいときもまずその方に連絡するわけですが、
もしその担当者が席を外していたり他の電話の対応中だと、他の方がとりあえず電話に出てくれるということはなく、留守電になってしまうんですよね。
それで、以前、息子の咳が止まらないとか、手が腫れて悪くなる一方とか、急ぎで予約を取りたくて子ども用の方の担当者に電話をしたときに毎回留守電になる、ということが何度か続き、かなり苛立った経験があります。
もちろん、留守電にメッセージを残せば折り返し電話してくれますが、電話をしたらできるだけ取ってほしいわけです。
だって留守電に入れて折り返しの連絡を待っている間、いつ電話が来るか、他のウォークインに行くべきだろうか、と考えるじゃないですか。
完璧なクリニックはないですけど、期待したいじゃないですか、お金払ってるので(やっぱここ)。
以前利用していた州のクリニックは電話をかけたらとりあえずすぐ誰かが取ってくれていて、電話越しに待たされることはあっても掛け直す必要はほとんどなかったので、
私はここに関しては以前の州のクリニックの方が好きですね。
すぐには予約が取れないことも
プライベートヘルスケアクリニックだからすぐ予約が取れるかと思っていましたが、そうでないこともしばしばあります。
以前、咳と鼻水が止まらない症状が数週間続いて木曜に問い合わせたら、月曜の早朝か、一週間後の午後しか空いてなくて、
早朝は息子の送迎もあるし、咳鼻水で緊急性はないだろうし、と思い一週間後を予約したら、受診時にはもう治っていたということがありました。
その後ドクター数を増やし、クリニックのスペースも増築されていたので変わっていることを望みますが、この部分は根本的に変わらないような気がします。ウォークインじゃないので。
まあ、本当に急ぎの場合はなんとかして入れてもらえたり、別のドクターに診てもらうとかしてもらえるかとは思いますが
もし本当に緊急だったら救急外来に行くように言われると思います。
プライベートヘルスケアクリニックがベストとは私は思わない
プライベートヘルスケアクリニックを利用している私ですが、プライベートヘルスケアクリニックがベストとは思っていません。
もちろん、州のクリニックよりも自分のことを気にかけてくれているとは感じますが、やはり、自分に合うドクターを見つけられたらそれが一番だと思ってます。
実は、このクリニックに登録後、何度も「州のクリニックで良いドクターがいればいいんだけどなぁ」と思いながら近所でファミリードクターを募集している医師をウェブサイトで確認していた時期があります。
なかなか近所に現れないのでプライベートヘルスケアクリニックでお世話になっているわけですが、特に受診しない月が続くと心が痛くなります(高いから)。
だからと言って毎月受診するほど気軽に行けるような場所でもないです。(お金払ってるけど)
ドクター受診だけでなく、他のサービスも含めて私がもう少しズカズカ利用できる人にならないといけないんでしょうけどね。。。
今は行きたいと思う州のクリニックがないからプライベートヘルスケアクリニックに留まっている感じですが、夫もそれでいいと言ってくれています。
プライベートヘルスケアクリニックを利用するといいと思う人
というわけで、プライベートヘルスケアクリニックを積極的にお勧めすることはないですが、こういう人は恩恵を受けるのかもしれない、と思う人はいます。
それは
すでに持病がある人で金銭面に余裕がある人
です。
健康面で定期的にドクター受診が必要な方にとっては、患者さんひとりにより時間をかけてくれるドクターはいいんじゃないかと漠然と思います。
ドクターが必要だと判断したときにMRIへの優先アクセスが得られるクリニックもありますので、ね。
さらにそういう方で健康への投資ができるくらい金銭面に余裕があり、クリニックが提供するサービスを積極的に利用していける人は価値を見出せるんじゃないかなと思います。
全体的な感想
「予防的医療サービスを提供する」とあるように、プライベートヘルスケアクリニック受診も、結局は予防的医療サービスの提供で留まっているような印象で、ひどい熱が出て本当に苦しい、という時に受診するところではないように思うのです。
それは州のクリニックよりも強く感じます。州のクリニックでは熱が出てきついという理由でウォークインで受診しますが、このクリニックでは「そんな急には対応できませんよ。」という雰囲気に包まれてます。もちろんしてくれるとは思いますが、まだ私には経験がないので何とも言えません。
私の性格が問題なのか、文化の違いなのか、育った環境が違うからなのか、その全てが原因かもしれませんが、正直、私にとって居心地が良い場所ではありません。
そして結局は州の医療システムに入っているので専門医に早く診てもらえるかどうかというのも怪しいところ。
紹介状をまとめるコーディネーターがいるので…と謳っていたり、独自のネットワークがあるのかもしれませんが、どれだけ優先されるかは不明です。比較するほど経験もないので。。
やはり州のクリニックで自分に合うドクターを見つけられたらそれが一番だと、現時点では思ってます。
最後に
ここまで書きましたが、現在プライベートヘルスケアクリニックは法の抜け穴をうまくついて存在していているようなもので、定期的に監査も入っているようです。
数年後になくなっている可能性もあれば、今後カナダの医療の法律が変われば逆にもっと増えている可能性もあります。
どうなっていくかはわかりませんが、今回はプライベートヘルスケアクリニックの現状や利用者としての正直な感想を述べてみました。
この記事が誰かの役に立てば幸いです。
では。
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