ここ数年、カナダでは移民が急増したこともあり家の価格が高騰したことは有名ですが、
教育機関、そして医療機関にもかなり影響が出ていて問題になってますよね。
実際、ファミリードクターを家の近所で探そうとしてもまず新規で受け入れてないところがほとんどで
運良く受け入れてるとこを見つけても自分に合うかどうかは賭けのようなものです。
さらに、専門医を受診できるまでの時間やMRI検査を受けるまでの時間、手術までの待ち時間などが長いことも問題となっています。
さて、私は今カナダに住んで10年目で、もう30代後半となりました。
若い頃はほとんど風邪も引かず、何かあればウォークインで診療してもらいファミリードクターもいませんでしたが、
子どもができたことで子どもはもちろん、自分の健康にも気を使うようになり、クリニックを受診する頻度も大幅に増えました。
入院も経験し、これまで見えていなかったカナダの病院の医療も一部見ることができ、
ここで一度自分のカナダの医療に対する思いや不安をまとめておこうと思いました。
カナダ永住者の一個人の意見となりますが、これからカナダに移住する予定の方や、今後永住しようと思っている方の参考になれば嬉しいです。
カナダの医療に対する印象
私の現在の「カナダの医療に対する印象」は、
死にそうなら死なせません(助けます)けど、そうでなければ待ってくださいという印象です。
救急外来、そして入院を通して感じたのは、こんな素晴らしい医療サービスを本当に無料で受けられていいのかということ。
先生方も親身に話を聞いてくれて、必要だと思われた検査は素早く手配され、すごくよい印象を受けました。
ただ、対して、クリニック受診からのとある血液検査で異常値が出たとき、
当時のファミリードクターから「専門のクリニックは3~6か月待ちだから気長に待ってて。」と言われ、
血液検査で異常が出ているのに3~6ヶ月も待たないといけないという、大きな不安が募りました。
(ちなみに自己免疫疾患のスクリーニング検査でした。)
まるで、救急外来受診をしたときは、血圧も下がり白血球などの値も下がり、「死にそうだから助けられた」ようで、
クリニックの受診では「すぐ死にはしないだろうから待っててね」
と言われているようでした。
少し大げさに言ってるように感じるかもしれませんが、数年前、オンタリオ州で義母がヒップリプレイスメント(人工股関節置換術)の手術を受けたときも、
いざ手術を受けるとなってから8ヶ月くらい待ってたので、あながち間違ってはないと思ってます。
医療現場で働く方々はきっと、「死にそうじゃなくてもできるだけすぐ助けます」を可能にしたいと強く思ってるとは思いますが、
医療システムと現状がそれを叶えるのを難しくさせているようです。
カナダの医療システム(アルバータ州)の良いところ
私が一つだけ、カナダの医療システム(ここではアルバータ州)のここがいい!と言い切れることがあります。それは、
医療の情報がひとつにまとめられているという点です。
日本だとカルテは各クリニックにあるかと思いますが、カナダのアルバータ州では、患者の重要な医療情報がNetcareというオンラインでまとめられていて、その情報に医療従事者はアクセスできるようになっています。
重要な医療情報については、
- 処方薬
- 薬局で購入した薬
- 公的医療機関で受けた血液や尿検査結果
- レントゲンなどの画像診断と放射線技師による診断レポート
- 入院や救急受診など病院(ホスピタル)の利用に関する情報
- 手術のレポート
- 薬の注意アラート(現状飲んでいる薬と新たに飲んでほしい薬の組み合わせが悪いとアラートが出る)
- アレルギーや過敏症など
- 名前・性別・住所等の個人を特定する情報
- 公的機関や薬局で受けるワクチン接種履歴
と記載があります。
すごく便利だと思います。つまり、私が過去にどういう血液検査を受けたかやその結果等の医療情報を、
アルバータ州の医療関係者がアクセスできるようになっているわけです。
※医療従事者それぞれに閲覧可能な範囲の権限が設けられているので、全員が全ての情報にアクセスできるというわけではありません。参照:Privacy and Security for Alberta Netcare
さらに、自分の情報について、MyHealth Recordsというページから、オンラインで無料で見ることができます。
過去記事で簡単に登録方法など紹介してます。アルバータ州にお住まいの方はぜひご参考に↓
カナダの医療システムの一長一短
どんなことにおいても、一長一短がありますよね。
カナダの医療システムについてはどうでしょう。ここでは、医療費が無料というところと、ファミリードクター制について触れてみます。
医療費が無料ということについて
クリニックにほとんど行かなかった20代の頃は、医療費が無料ということにあまり恩恵を感じませんでしたが、
子どもができて、子どもだけではなく私自身もクリニックを以前より受診するようになり、
さらに2024年に30代半ばで入院を経験し、医療費が無料というのはスバラシイなぁと思うことが多くなりました。
ですが、医療費無料と共にあるのが長い待ち時間。
日本のようにお金を払って早めに受診できるのと、無料だけど待ち時間が長い、どちらがいいでしょうか。
私は今のところ、お金を払ってでも早く結果を知りたいし、早く治療に入りたいと思いますね。
子どもが幼いのでもし自分に病気が疑われたら早めに治療を始めて、体を動かしていられる期間を少しでも伸ばしたいです。
子どもが大きくなれば考え方も変わると思いますけどね。
全てはファミリードクターから始まることについて
カナダは基本的にファミリードクター制です。
血液検査やイメージ検査、その他検査、さらに専門医への紹介も全て、ファミリードクター(いない場合はウォークインのドクター)を通して行われるということになります。
ファミリードクターを通すことによって、一人のドクターが一人の患者さんの健康面の全体像を把握できるのは良いことかもしれません。
ただ、ファミリードクターはたくさんの患者さんを抱えていて、一人ひとりの患者さんに時間をかけられていないことも事実。
そのため「ファミリードクター=自分のことをよく理解してくれてる」と思いたいけどそうではないんですよね。
また、このファミリードクターから全てが始まるというのは、日本のように、
頭痛がひどくて脳神経外科に行く、生理痛がひどくて婦人科に行く、耳鼻科に行く、皮膚科に行く、というように最初から直接専門医に診てもらうことはできないということです。
つまり時間がかかるわけです。
だからこの
- 一人のかかりつけ医を持つというファミリードクター制
- 全てがファミリードクターから始まるシステム
が、いいかどうかについても、人それぞれ好みが分かれるところかと思います。
ファミリードクターにもっと余裕があり、全てのプロセスがもっとスムーズに行くのであればファミリードクター制は魅力的かもしれませんけどね。。
カナダの医療を受ける上での不安
カナダの医療を受ける上での不安は、
時間がかかることで精神を病むことです。
検査を受けるまでにステップを踏まないといけず、待ち時間も長いのでその間精神的に病んでしまう可能性があります。
たとえば私の過去の経験で言うと、リンパにしこりができているのに気づいてからエコー検査の結果を聞くまで2週間ちょいかかりました。
この体験談を具体的に紹介すると、
まず、リンパに複数しこりが触れたのでドクターを予約。電話して、3日後に予約が取れました。
ドクターの触診で、エコー検査を受けてくださいという要求書(requisition)をもらい、今度は市内のいずれかのdiagnostic imaging centre(画像診断所)でエコーの予約をします。
要求書に書いてあったイメージングセンターは最短で3週間先しか空いていなかったので、いくつか別のセンターに電話して、1週間先が空いているところに予約を入れました。
やっとエコーを受けられても、その場で結果を聞くことはありません。撮られたエコーを元に放射線科医により診断され、ファミリードクターへレポートが送られます(アルバータ州の場合はオンラインで先に確認できます)。
ファミリードクターから電話で結果の連絡があるか、または受付スタッフからフォローアップの予約を入れるように連絡が来て、予約日にやっとファミリードクターと話すことになります。
このように、「しこりがある!」と気づいてから検査結果を聞くまで2週間ちょいかかったわけです。
今思えば割と早い方だと思います。別のイメージングセンターに問い合わせていなければもっとかかっていました。
でも、日本だと一日で終わるんじゃないかなと思います。
待っている間すごく不安になるし、たとえ結果に異常がないとしても、結果を知るまでに必要以上に病むことになります。
日本だったら…と一度は考えてしまい、考えてやるせなくもなります。
今の私が思うところ
ここまで書いてきましたが、最後に今の私が思うところをまとめると、
- 病院治療はすばらしくて不満はない
- 自分に合うファミリードクターを見つけられるかが大事
- 医療関連の英単語と医療の一般的な知識を身につける努力が今の自分に必要
といったところでしょう。
病院治療はすばらしくて不満はない
入院するまでカナダの医療制度にうんざりしていた私ですが、入院を経験して印象がかなり変わりました。
入院中は至れり尽くせり。どのドクターも私の話に親身に耳を傾けて聞いてくれました。
今でもオンラインで入院中の検査内容や結果が見れるのですが、毎回の血液検査で様々な検査が行われていました。「原因をはっきりさせたい」という思いが詰まってるように見えます。
先生方の説明も、一般人にもわかりやすいように、そして本当に大事な部分だけを説明してくれたようで、特に会話の中で英語面で困ることはありませんでした。
そういうわけで、入院中は安心して過ごせました。これは結構大きな発見だったと思います。
自分に合うファミリードクターを見つけられるかが一番大事
カナダ全体で問題にもなっている「待ち時間が長い」というところは私の力ではどうしようもありませんが、
でも自分に合うファミリードクターに出会えるかどうかによって、自身の「全体的な医療受診の経験の質」を大きく変えることができると思います。
私はカルガリーに来てもうすぐ5年というところですが、ファミリードクターは現在3人目。
1人目は初回挨拶で全くいい印象を受けなかったので、その後すぐ別のところで探しました。
2人目のファミリードクターでお世話になっているあいだ、セカンドオピニオンで別のウォークインドクターを利用していた時期もありましたが、
2人目のドクターは近所だったので利用していただけで、合うかどうかと言えばそうではありませんでした。
結局今はプライベートクリニックにお世話になっています。自分に合うかどうかは別として、公的機関よりも気にかけてくれるのは確かです(そりゃ高額費用払ってますからね)。
でも自分に合うドクターを見つけることができれば、わざわざプライベートにする必要はないと思ってます。
医療関連の英単語と医療の一般的な知識を身につける努力が今の自分に必要
海外(カナダ)に住んでいるということで、医療や健康に関する英単語と知識を常に身につける努力をする必要があると強く感じます。
普段から健康関連の英単語と知識を身につけておくことで、受診への不安も軽減されるでしょう。
ドクターによっては、これくらいは知ってるだろうとして話されることもあり、
なんだか知らないことを恥ずかしく感じ、聞けない、強く言えないことが過去にありました。
(喘息と肺炎のことでした。)
逆に、別の検査方法や治療方法、薬などがあるのに、言ってくれないドクターもいます。
そういう時に自分から「こういう検査があるのではないか?してほしい。」と言えるようにも、知識はつけておくに越したことはありません。
医療の知識というのは、自分も周りも健康だと、なかなか積極的に取り入れようとする人は少ないと思います。
私がそうでした。
でもここ数年で、帯状疱疹(たいじょうほうしん)や膠原(こうげん)病という、日本語でもしっかり理解していない病気について調べることとなりました。
特に帯状疱疹は、英語で「これShinglesかもしれない」と言われたのが初めてで、日本語で調べても、「帯状疱疹?何それ」というくらい無知。。。
でも病気のことって、いざ自分が「この病気かもしれない」とか「この病気だ」となってからたくさん調べる人が多いのではないでしょうか。
これから歳を重ねるにつれそういう機会が増えてくるんだろうなと、つくづく思います。
実際、今では以前に比べて病気のことを積極的に調べるようになりましたし、マガジンなどで記事を目にしたら必ず読むようになりました。
ただ、医療系の英単語や知識って、必死に覚えても少しの間使わないと抜けていきやすいと感じます。
定期的に見返して、一度身につけた知識がなくならないように努力しないといけないなとつくづく思います。
最後に
いかがでしたでしょうか。
これからカナダの医療制度は変わっていくかもしれないし、変わらないかもしれないし、自分が歳を重ねることにより考えが変わっていくかもしれないし、変わらないかもしれません。
この先どうなるかはわかりませんが、カナダに住んで10年目の現在の私が思うところをまとめてみました。
もちろんカナダ在住の日本人、10人に聞けば10種類の答えが返ってくると思いますので、一個人の意見として捉えていただけると幸いです。
正直言えば、移住を決めた20代の頃は、あまり真剣に考えていなかった分野です。わかってはいたけど「まあ、どうにかなるでしょ。」とゆるく捉えていました。
でも医療とは、歳を重ねていくうちにほとんどの人が受けることとなるものです。
自分が将来どんな医療を受けたいかと言うのは、永住する場合大事な要素になって来ると思うので、一度真剣に考えてほしいと思います。
そして今もし不安を抱えている方がいれば、今の自分ができることに取り組んでいただき、不安要素を少しでも減らしていただけたらと思います。
この記事が、あなた自身が受けていく医療のことについて考えるきっかけとなれば幸いです。
では。
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