アイロンリングと呼ばれる、カナダのエンジニアが持つ指輪の大きな意味に感動!

カナダ生活

Iron Ring(アイロンリング)と呼ばれるこの指輪。カナダ国内のエンジニア学校を卒業した技術者達が必ず持っている(そしてほとんどの人が小指にはめている)指輪です。

今回、あるエンジニア君に出会い、この指輪のことについて初めて知ったのですが、その内容が感動的だったので、ブログに書きたいと思います。

きっかけは、昔起きた事故

1900年、ケベック橋と呼ばれるケベックシティとレビィを結ぶ、線路を含む橋(987m)の設置工事がスタートしました。工事が終了間近になったとき、スチールを運ぶ蒸気機関車の重さに耐え切れず、橋は崩壊し、75名の人が亡くなりました。事故の原因は技術者達にあるということがわかり、次々と問い合わせが寄せられました。

そもそも、準備段階で技術者によって行われた計算はちゃんとしたチェックが行われないままデザインの段階に入りました。橋の実際の重さは、橋の積載量を大幅に上回っていました。これに気づいたある技術者がこの工事の技術担当者に何度も連絡しますが、担当者は最初その間違いは小さなものだと返答。その後もいくつかの間違いが見つかり、その技術者はその担当者に手紙を書き、二人はニューヨークで会うことに。これが1907年の8月29日。そこで担当者は間違いが深刻なことに気づき、工事会社に電報で連絡。

「検討の結果が出るまで橋にこれ以上追加で物を乗せてはならない。」

残念なことに、この日の午後の退勤時間の前に、4年かかって作られてきた橋は15秒で崩壊しました。その日橋の上で働いていた86名のうち75名が亡くなり、生き残った人も怪我をしました。

なんと、1916年に、再工事をしましたがその時にも技術者の計算間違いで事故が起こり、13名の人が亡くなりました。その後、1917年に橋は完成しています。

参照:https://en.wikipedia.org/wiki/Quebec_Bridge

The Ritual of the Calling of an Engineerという式典

その後、1922年にモントリオールで行われたカナダ技術者協会で、トロント大学土木工学のHaultain教授が、カナダのプロ技術者を集める組織が必要と感じていることを語ります。

彼は、Kiplingという教授に、威厳のある義務と式典を構築する手助けを求めました。Kipling教授はとても熱い方で、すぐにThe Ritual of the Calling of an Engineerという義務と式典を公式に作りました。
これは、新たに資格を得た技術者達にプロの意識と社会に対しての影響を教え、そして経験のある技術者達には新たな技術者を歓迎しサポートするということを教える式典です。

参照:

The calling of an Engineer 

Ritual of the Calling of an Engineer - Wikipedia

事故を、そして技術者としての責任を忘れないために

自分の計算ミスが原因で、人が死ぬこともありえる―

この指輪は、技術者としての資格を表すものではなく、技術者のプロとしてのプライドを表すと同時に、謙遜の心を忘れないということを表しています。

カナダの技術学校を卒業した技術者達はこの式典に招かれ指輪を手に入れます。彼らはこの指輪を利き手の小指にはめていて、紙に計算式を書くときに常に机に当たる小指とそこに光る指輪を見て過去の事故を思い出し、ミスを犯さないよう、慎重に、謙遜の心を持ちながら、そしてプロとしての責任を持って仕事をしています。

参照:

The calling of an Engineer

Ritual of the Calling of an Engineer - Wikipedia

指輪は崩壊した橋の鉄を使用して作られた!?

最初の指輪は、崩壊した橋の鉄を使用して作られた…と、技術者、そして技術者以外も含め多くの人が信じているのですが、実は違うようです。

現在はステンレススチールでできているものがほとんどですが、場所によっては錬鉄かステンレススチールを選べるところもあるようです。

参照:https://en.wikipedia.org/wiki/Iron_Ring

実は、アメリカにも同じような物が

Order of the engineerという技術者の組織メンバーがはめている指輪。Engineer Ringと呼ばれています。先に述べたカナダのThe Ritual of the Calling of an Engineerから影響を受けているようです。

参照:https://en.wikipedia.org/wiki/Engineer%27s_Ring

最後に

いかがでしたか。私はこのことを知ったとき、とても感動しました。この指輪のことを思いついた人もすごいですが、それがその後のエンジニア達にずっと浸透し続けているという事実も、とてもすばらしいことであると思います。

そして何より、実際にエンジニアである方がこのように語ってくれたのですから。「仕事をするときに小指が紙に当たって、その度にこの指輪に秘められた意味を思い出す。」と。

もしカナダでエンジニアに出会ったら、小指を見てみてください。きっとそこには指輪があるはずです。

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