最近の記事でカナダ(アルバータ州)での入院の体験談を書いてきましたが、
ここで一度、カナダの医療制度について自分なりにおさらいしてみたいと思い記事を書くことにしました。
調べてみると、「あれも書ける」「これも書きたい」となるくらい情報がたくさんあったので
そのたくさんの情報の中から私なりに「特に覚えておきたいな」「まだ知らない人に知ってもらいたいな」と思った部分を抜粋してまとめます。
この記事は、
- カナダの医療制度についてざっくり知りたい
- カナダの医療制度についてざっくりおさらいしたい
- カナダの州の保険が適用されるもの・されないものをざっくり知りたい
という方におすすめです。
経験から得た情報と、インターネット上の信頼できるウェブサイト(主に政府のもの)の情報を参考に書いておりますが、
参考ウェブサイトを最後に載せておくので、最新情報はそちらからご確認お願いします。
*がついている部分は記事の最後に参照先をまとめています。
カナダの医療制度の特徴
まず、カナダの医療制度の特徴って何?と聞かれたら、なんと答えるでしょうか。または、なんだと思いますか?
ここではその答えとして、これを言えば全体像がわかるかな、と思うものとして下記4点を挙げてみます。
1. 医療費が無料
「カナダは医療費が無料」とは聞いたことがある方も多いかもしれません。
そうです。基本的に、カナダ国民・永住者(州の健康保険証所持者)は病院やクリニックで受けるMedically necessary services(医療に関する必要な治療や検査など)は無料で受けられます。
これは、カナダのThe Canada Health Actという法に含まれる「医療へのアクセスのしやすさ(Accessibility)」、つまり
医療の利用は、支払い力ではなく、医療の必要性によるものとし、住民全員が受けられる医療サービスでなければならない。*1
Government of Canada – About Canada’s health care system
という部分に関連しているとも言えるでしょう。
お金がないから受診できない、ということがないわけです。
ですので、たとえば風邪や怪我でクリニックを受診した場合、最後に支払いをすることなくクリニックを去ります。
病院も無料なので、私が入院したときも一銭も払わずに退院しました。
ただし、カナダに住む人全員が無料で受けられるというわけではなく、保険申請できるのは主にカナダ国民と永住権所持者となります。
こちらもカナダ政府の記事にありますが、The Canada Health Actによると被保険者は州又は準州の居住者で、
法的にカナダに居住または滞在資格があり、居を構え、通常州にいる人のこと。ただし、旅行者、短期滞在者、州の訪問者は除く。*2
Government of Canada – Canada Health Act – Frequently Asked Questions
ということなので、短期滞在者は民間の保険に加入することになります。
私は永住権を取るまでの間はBlue Crossの保険に加入していました。結局使うことはありませんでしたが(^^;
というわけで
Medically necessary services(医療に関する治療や検査など)は無料ということがわかりましたが
じゃあ何が保険適用されて何が適用されないかについては後ほど述べることにします。
2. 州によって公的医療保険の内容が若干違う
カナダの公的医療保険は、国が定めるThe Canada Health Actを元に州や準州で定められているので加入する州によって若干違いがあります。
シンプルにたとえるとするならば、日本で関東、近畿、などエリアごとに医療保険の内容が若干違うといった感じでしょう。
じゃあ国は何もしないのかというとそうではなく、
下記のようなことをやっているそうです。*3
- Canada Health Actを通して医療制度の国の基準定め、管理する
- 州・準州に対する医療用財源の供給
- 特定の人々(原住民や軍のメンバー他)に対する医療提供の支援
- 医療に関する事柄の提供(食品の規制やリサーチ、税関連などなど)
ちなみに、州や準州の保険に加入することとなりますが、カナダ国内の別の州に旅行へいく場合も適用される保険なので
カナダ国内旅行のために旅行保険に入る必要はありませんが、適用される範囲が若干違うことがあるのでそこは注意が必要です。
もし州をまたいで引っ越す場合は、引っ越し後3か月以内に新しい州の保険に切り替える必要があります(3か月までは以前の州の保険が使える)。
3. ファミリードクター制が基本
多くのカナダ人はファミリードクターを利用します。*4
ファミリードクターを自分で見つけて、その後は毎回同じドクターを受診するという流れです。
このファミリードクターが各種検査が必要だと判断した場合、血液検査やレントゲン検査などの要求書を書いてくれます。
それを持ってまた別の施設を予約し、検査を受け、ファミリードクターに結果が行きます。
同じように、専門医への紹介もファミリードクターを通して行われます。患者が直接専門医を予約することはできないのが一般的です。
もしファミリードクターがいない場合は、ウォークインクリニックを受診することになります。
ウォークイン(Walk in)を受け付けているお医者さん達も、もちろん上に挙げた要求書の作成や専門医への紹介も必要だと判断すれば行ってくれますので
必ずしもファミリードクターを決めておかないといけないというわけではありませんが
毎回初対面のお医者さんに診てもらうよりも、安心感はあります(日本にいる時はこの考えはなかったけど…)。
そしてやっぱりファミリードクターを持つ方が一般的なので、
医療的な情報を記入する書類ではファミリードクターの名前を書く欄があります。
特に子どもを持つと、学校の書類にファミリードクター名を記入しないといけないので、
ここが空白だと親としてどうかな、と記入しながら思ったりもします。
ちなみに過去私は家から徒歩1分のウォークインクリニックを利用していましたが、
行く前に混み具合を電話で確認し、混んでなければ即行ったり、もし空きがあれば予約をしたり、自分が動けるなら直接行って混んでたら予約取ってまた行く、といった感じで利用していました。
でももう5年以上も前の話なので、移民が急増した今はもしかしたら予約が取りにくい状況になっているかもしれません。
4. 薬剤師が処方箋を出せる州もある
近年移民増加も伴い医療機関はひっ迫しています。
そこで2023年、オンタリオ州で薬剤師が一部薬の処方箋を書くことができるようになりましたが
実は、他の多くの州ではここ5年、6年ほどですでに施行されていたんですよね。*5
アルバータ州では、薬剤師の中でも追加で資格を持つ人だけが一部の薬の処方箋を出すことが可能ですが
2006年から始めていて、カナダの中でも薬剤師により出せる処方箋の種類が一番多い州となっています。
下記のリンクから、各州で薬剤師がどんな薬を処方できるかの詳細を見ることができます↓
Canadian Pharmacist Association
私はまだ薬剤師さんから薬を処方してもらったことはないのですが、
夫が2023年、オンタリオ州滞在中に目の赤みがなかなか治らず、shoppersで目薬を処方してもらっていました。
年末だったし、旅行中だったし、なんだかんだで便利だったなぁと思います。
保険適用されるものとされないもの
さて、ここまでカナダの医療の特徴として私なりに4点挙げましたが、
じゃあ州の保険では一般的にどのようなものが保険適用となるのか、ならないのか、気になりますよね。
細かいところは州・準州によって若干違うようですので、あくまでも一般的な部分だけ、政府のウェブサイト*6から挙げますと、
一般的に保険適用されるもの
- 病院(Hospital)で受けるケア、処方薬を含む
- 医師によるケア
- 病院(Hospital)で受ける歯科医によるケア
と書かれています。
これだけじゃピンと来ないかもしれないので、逆に民間の保険がカバーしている部分から、州の保険では適用されないものをみてみましょう。
一般的に保険適用されないものの例
公的の医療保険が適用されないものについては、会社を通して、または個人で民間の保険を利用します。
たとえば、下記のようなものです。*7
- 処方薬
- 歯科受診
- 理学療法
- 救急車利用
- 眼鏡の処方
一つずつ見ていくと、
処方箋
医師から処方箋をもらい薬局で支払う料金については、州の保険ではカバーされず、全額負担となってしまいます。
歯科受診
歯医者の治療も自己負担。ただでさえ歯科受診は高額ですので民間の保険に加入しておくのが一般的です。(2024年1月から歯科受診の保険がない方の一部を対象としたCanadian Dental Care Planというものがあります。)
理学療法
カイロプラクティック、マッサージ、運動療法といった健康の維持に関するものも州の保険は一般的に適用されず、民間の保険適用となります。
メンタルに関する心理学者の受診や栄養士の受診なども民間の保険でカバーされていることがあります。
救急車利用
日本と違って救急車は無料では呼べない(州の保険適用外)ので、これをカバーする民間の保険に入っていない場合は基本的に全額自己負担となります。
たとえば、アルバータ州だと2025年1月現在、救急車は呼ぶだけで250ドル、運ばれたら$385ドル、アルバータ州に住んでいない方の場合は追加200ドルです。その他アルバータ州のこちらのウェブサイトに救急車利用金額を請求されない方の条件などの記載があります。
眼鏡の処方
メガネやコンタクトを作るための視力検査も州の保険適用外となりますが、目に異常があってoptometristを受診する場合は医療行為となり無料となります。
上記にありませんでしたが、入院中に病室のアップグレードを希望した場合も自己負担となるので、民間の保険も種類やプランによってカバーしていることがあります。
細かいところまで挙げればもっと出てくるかもしれませんが今回はこれくらいにしておきます。
ちなみに、シニアや子ども、生活保護受給者は州の保険で補助的にカバーされています。*8
アルバータ州で18歳までの子どもの目の検査が一年に一度無料になるのはその一例と言えるでしょう。
最新で詳しい情報は各州のウェブサイトでご確認お願いしますm(__)m
最後に
というわけで、カナダの公的医療制度についてまとめましたがいかがでしたでしょうか。
カナダ永住者の一人として、経験談も含めできる限りわかりやすくまとめたつもりです。
実は調べながら「そうだったんだ~!」と初めて知ることがあり、カナダに住んで10年も経って、少し恥ずかしい思いでいます。
自分用におさらいを含めて書いた記事ですが、少しでも役に立ったと思っていただけていたらうれしいです。
それでは、また。
—こちらの記事もどうぞ—
参考ウェブサイト
この記事を書くにあたり参考にしたウェブサイトを載せておきます。
この記事には載せきれなかった情報もたくさん書いてあるので、時間があるときに読んでみることをおすすめします。
その他、自分が住む州の医療情報ページもチェックしてみてくださいね。
カナダ政府 About Canada’s health care system
*1 Accessibilityの部分
*3 Canada Health Actの部分
*6 Comprehensivenessの部分
*8 Accessing health care servicesの部分
*2 カナダ政府 Canada Health Act – Frequently Asked Questions
リンク先 Who is eligible for health care coverage in Canada?の部分
*4 カナダ政府 Health care in Canada: Access our universal health care system
リンク先 Using a family doctorの部分
*5 CBC radio Alberta pharmacists lead Canada in filling care gap
*7 カナダ政府 Health care in Canada: Learn about other types of health insurance
リンク先 Private health insuranceの部分
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